はじめに
“企業の業績と開示情報の質・量には正の相関がある”という仮説のもと、元IR担当(2015年~2016年)+元コーポレートサイト担当(2016~2017年)+現Webデザイナー(2017年~現在)という経歴を踏まえ、コーポレートサイトと決算説明資料のクオリティで上場企業を評価していきます。
評価基準
以下の2つより20点満点で評価します。
①コーポレートサイト
・サイトの使いやすさ(UI/UX/スマホ対応/デザインなど)
・コンテンツの充実度(質/量/更新頻度など)
→以上を踏まえ、1~10点で評価
②決算説明資料
・プレゼン資料としての見やすさ(デザイン、ロジック、メッセージ性など)
・コンテンツの充実度(質/量など)※決算説明資料がない場合は他の開示書類
→以上を踏まえ、1~10点で評価
対象銘柄
今回は業種区分:水産・農林業の1回目です(全2回を予定)
・1303:極洋
・1332:日本水産
・1333:マルハニチロ
・1376:カネコ種苗
・1377:サカタのタネ
についてレビューしていきます。
1303:極洋
【企業概要】
水産物を中心とした総合食品会社。いつもとなりにおいしいキョクヨー。
失礼ながら企業名は存じ上げなかったものの、さばの缶詰はスーパーでよく見るあれでした。
1949年に東証一部上場。
①コーポレートサイト
ここがGood!
・コーポレートサイトのお手本のようなコンテンツ量
→企業情報、商品紹介、IR情報、採用情報、CSRと、まさに教科書的なラインナップのコンテンツ。知りたいことが網羅されています。
特設ページや動画も複数あり、Webサイト制作に積極的な印象を受けました。会社案内がPDFでダウンロードできるところも〇。
ここはBad…
・全体的にデザインが古い
→新卒採用サイトや家庭用食品ブランドサイトなど後発と思われるページに比べると
画像サイズや色のグラデーションの感じがひと昔前のサイトのような印象を受けました。
これだけコンテンツがあるとリニューアルにも腰が重くなりますが、時期を見てやったほうがいいと思われます。
・トップのスライダーの数が多い
→コンテンツの量に比例して増えがち(全部載せちゃえ的な)なので、
多くても推したい固定コンテンツの内容2~3枚+旬な内容(キャンペーンなど期限つきもの)を1枚目にした構成の方が今より見やすいです。
・スマホ対応が一部のページのみ
→スマホで閲覧したときにだいたいのリンクに「PC」と書いてあるのがとても気になりました。
デザインの話にも関連して、もともとRWDでないつくりだとスマホ対応はそこそこ面倒な案件ですが
近年のMFIの流れを考えると対応が必要となるでしょう。
小計:6点
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②決算説明資料
ここがGood!
・中期経営計画を踏まえたストーリーを展開していてわかりやすい。
→前計画の振り返りと今計画が目指すところが明記されているため、企業がどうありたいのかが定性的・定量的に理解することができました。
・事業セグメント別売上高の推移(P.10)と事業別の当期の状況(P.18〜24)が記載されており、個別事業の規模感と動向をつかみやすい。
→どんな事業があって、どの事業が主力で、どのような調子かが初見の投資家にもすぐわかるのでありがたいコンテンツです。
ここがBad…
・中高年がパワポで作った感が満載
→フォント、配色、棒グラフの背景とグラデーション、レイアウトなどなど全てにおいてツッコミところ満載な資料に感じました。特に「Change Kyokuyo 2021」ではこれからの未来ある、楽しい(投資価値を感じられそうな)話をしているのにそれが伝わらないのがもったいないです。
小計:4点
改善提案
特に気になったのが決算説明資料の「3ヵ年のトピックス(P.4〜5)」、「『Change Kyokuyo 2021』の事業戦略(P.28)」、だったので、改善策をデザインしてみました。
「3ヵ年のトピックス(P.4〜5)」の改善案です。時系列で分けて、重要そうなワードを太字にしました。また全てテキストだと見ていて疲れるのでキャッチとなる画像がいくつかあるとよいと思います。
「『Change Kyokuyo 2021』の事業戦略(P.28)」の改善案です。まず中心に据えてある「高収益構造への転換」というパワーワードがまさかのグレー色で表記されていたので、ポジティブな色に変更しました。また上下左右の矢印が中央に集まるという構造よりは、それぞれが機能することで高収益につながるというシナリオだと思うので、並列にして重要なワードだけ見てもらえるようなレイアウトに変更しました。
というわけで極洋の合計は10点でした。サイト・資料共に伝えたいことは明確なので、あとはそれがいかに視覚的にも違和感なく整理された状態で表現できるかにコストをかければもっと輝く企業になるのではないでしょうか。